あずまんが大王衣装




あずまんが大王』(あずまんがだいおう)は、あずまきよひこによる日本の4コマ漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。『月刊コミック電撃大王[1]』(メディアワークス(現・アスキー・メディアワークス))において1999年2月号(98年12月発売)から2002年5月号(02年3月発売)にかけて連載された。単行本は全4巻。

概要

とある高等学校[2]を舞台にした学園物コメディで、キャラクターの多くは女子高生である。特定の主人公は存在しない。連載時は『電撃大王』での掲載時期と作中の時系列がリンクしており、春には進級、秋には体育祭・文化祭といった形で、その時期に応じた話が展開していった。ただし、あくまで季節や行事を現実時期とリンクさせただけであり、作中の世界について西暦何年といった時代背景や、キャラクターの生年は設定されていない。3年3ヶ月にわたって連載されており、同世代性のある世代は存在しない。メインキャラクターの入学直後から本作の物語は始まり、進級ののち、卒業して高校生活を終えると同時に完結した。

萌えキャラたちの日常生活の描写に重きを置く作風は、それ以前より散見されつつもあまり目立った存在とは言えなかった「萌え4コマ」・「空気系」と呼ばれるジャンルを世に知らしめ、普及させる嚆矢となった[3][4]。4コマ漫画界に大きな影響を与えた作品のひとつであり、発表から10年以上が経過した2010年代現在においても「あずまんがフォロワー」と言える作品が多数存在する(2010年に発売された当作品の新装版の帯には『21世紀の4コマ漫画は、ここから始まりました』というコピーが使われている)。キャラクター配置は漫画『日常』に影響を与えている。

2000年にアニメ化され[6](タイトルは『あずまんがWeb大王』)、同年12月28日から1話のみ3か月間、インターネット上で有料ストリーミング放送が行なわれた。代金の支払いはWebMoney(電子マネー)に限られており、当時はブロードバンドがほとんど普及していなかったため、サイズの都合上やや粗い画質で放送された。 2001年12月22日、スタッフと声優を変え6分ほどの短編映画『あずまんが大王 THE ANIMATION』が公開された。

2002年には映画版の声優とスタッフによるテレビアニメ全26話が放送され、同時期にゲーム化も実現した。2004年10月にはテレビアニメ版のインターネット配信を開始した。

2006年に文化庁が発表した日本のメディア芸術100選(マンガ部門)に選出された。

2009年には作品の生誕10周年を記念し、以下の企画が実施された。『ゲッサン』(小学館)2009年6月号(創刊号)から8月号にかけて描き下ろし新作「あずまんが大王補習編」が短期連載された。また、小学館より全3巻の新装版が刊行された。新装版は作者の大幅な加筆修正に加え、「補習編」がそれぞれ同じ時系列の話に繋げる形で追加収録されている。10周年企画の締め括りとして、10月にスペシャルムック「大阪万博」を刊行。本作の軌跡を事細かに解説するグラビアページ、単行本未収録作品、豪華作家陣が手がけるトリビュートコミックなどが収録されている。

反響

日本での「あずまんが大王」は2002年、文化庁によって「奨励賞」作品にあげられた[9]。また2006年には上位25の漫画の一つに挙げられている[10]。 英語圏の評者たちも「あずまんが大王」へは好意的なコメントを寄せている。「マンガ・コンプリートガイド」のジェイソン・トンプソンは、「チャーミングなコメディ」であり「4コマ形式がきわめて巧み」だとし、その笑いのテンポやリズム、ギャグの天丼を称賛している。彼は「キャラ先行の描き方」がこのマンガで最も優れた点だと考えているが、同時にその「萌え」性や「ともすればロリコン教師」ともとれるキャラクターに関するギャグが、新しいマンガの読者たちを敬遠させてしまうのではないかと危惧している。彼はのちに、「あずまんが大王」は「萌え」の「ほぼ純粋な」かたちであり、「かわいい子がかわいい事をする」という「少女たちの清らかな世界を覗き見する」作品群の頂点にたつものだと語っている[12]。フランスのマンガ辞典である「Dicomanga」には、「おたくをターゲットにした萌え作品」とあるものの、そこに「笑いだけでなく少女たちの友情」もあると女性の読者に訴えてもいる。マーク・ヘアストンは「あずまんが大王」を、「しょっちゅう話がずれたり」、「文化的なバイアスがかかって」いて「ちょっとまとまりに欠ける」としているものの、「マリア様がみてる」よりもひどくないし、皮肉が効いていると述べている。また「あずまんが大王」のキャラクターたちは「いっぷう変わった性格をした人々」だとしている[14]。マーク・トーマスはMania.comに向けて書いた文章のなかで、登場人物の一人一人が「はっきりとした個性を持っていて、それがアブノーマルなところまでいって」おり、さらにみなが「引き立てあい、その個性をくっきりさせ、登場人物としてのリアリティを失いすぎたり、不愉快にしたりさせない」と述べている。またトーマスは4コマ形式それ自体がこのマンガに「複雑なストーリー展開」をもたせていないのではなく、ストーリーは「習慣的な日常生活から無作為に選び取った瞬間を速写」したものとして提示されており、けっして「キャラクター先行の物語」ではないとしている[15]。パトリック・キングはAnime Fringeへの文章で、「これまで読んだなかで最もおもしろくて、すてきなマンガの一つ」だとしている[16]。IGNは物語の背景の欠如を指摘しているが、登場人物たちの豊かな表情がそれを補っているとする。

「Animation World Magazine」のフレッド・パットンは、アニメ版の「あずまんが大王」を「とにかくウィットに富んでいるし、日本の高校生活が本当はどんなものなのかを知るための窓としては教育的でさえある」と述べている[18]。「Anime on DVD」のクリス・バーヴェリッジは、「とっても笑えるし、お気に入りのキャラクターを見つけようとしたとたん、そのキャラの存在がどんどん大きくなる」という[19]。Anime Metaでのアンドリュー・シェルトンの説明によれば、「少女たちのキャラクターが、非常にうまくでている。観察力もすぐれていて、表情をよくとらえている。それが、ストーリーを追うためだけにアニメを見るどころか、びっくりするぐらい楽しいものにさえしている。動きやとってもおかしなコメディもすばらしくよく描かれている。ごく細かい表情にさえなにか意味があり、しかもチャーミング」である[20]。THEM AnimeとAnime News Networkのレビューによれば、「もう高校を卒業してしまったファンがアニメを見ていると、当時を思い出してノスタルジックな雰囲気にひたれる」。